自計化
会計事務所や税理士事務所からよく「自計化」という言葉を聞いたことはありませんか?会社の社長や経理担当者の方々など皆さんにとっては全く聞きなれない言葉だろうと思います。
自計化って何ですか?
自計化とは、会計事務所の顧問先である企業が、会社のパソコンを使って、自分で会計ソフトに必要データを入力することをいいます。
なぜ自計化が必要なのでしょうか?
よくこんな会話を耳にします。
--銀行融資の申し込みの時に--
社長「すぐに銀行融資を受けたいのだが、試算表を用意してくれないか」 税理士「直前の試算表は、まだ資料を頂いてないので出来ません」
--決算を3か月前に控えて--
社長「今年は、どうしても黒にしたいのだが、今はどういう状況かな」 税理士「まだ6カ月前の試算表しかないので、なんとも言えません」
--月末に支払う請求書を見ながら--
社長「来月、大量に仕入れを予定しているが、資金繰りは大丈夫だろうか」 税理士「現時点の状況を把握できていないため、良くわかりません」
--申告書に捺印する前に決算書を見て--
社長「今年は利益が沢山でているから、何とかしてくれよ」 税理士「決算月が過ぎてしまっていますので、何も対応ができません」
このような会話はありませんか?
全ては、会計事務所に資料を渡し、2~3か月後に試算表が出来上がっていることに原因があります。社長が試算表を見るときには既に3か月経っています。このような状況では、現時点の状況と今後の予想をするのは不可能です。ですから自計化して、前月の状況を翌月監査するのです。
自計化するメリットは?
企業が自分で会計ソフトに必要データを入力して、翌月会計事務所が監査することによって、
- 現状の業績が把握できる(今、儲かっているか否かがわかる)
- 過去の不明な入出金や取引の内容を、記憶が新しいうちに思い出すことができる
- 毎月経理処理を行い、翌月監査することによって、処理のミスが少なくなる
- 今後の業績見通しを立てることができる
- 業績見通しに基づいて、今後打つべき対策が見えてくる
- 資金繰りの状況を把握できる
- 金融機関に対する信用度が増す
など改善が期待されます。
自計化するデメリットは?
もちろんいいことばかりではありません。
- (自計化のやり方によっては)今まで(自計化を行なう前)より作業量がかなり増える
- (経理処理を行なうための)専門的な知識を身につけるのに時間がかかる
- 入力作業を自社で行なうのに顧問料が下がらない(もしくは付加価値の高いサービスが受けられない)
- 自計化を行なうにあたって新たな設備投資が必要になる場合がある
会計事務所にとって企業に自計化してもらうメリットは、なんといっても「起票および入力作業を企業に行なってもらうことにより、職員の作業が減少すること」にあります。ですから会計事務所の都合ばかりを企業に押し付ける「悪い自計化」は、信頼関係を損なうことになります。
私ども小松原会計事務所では、次のことに留意したうえで、自計化の導入を支援しています。
- 経理業務全体の効率化提案を同時に行うことで、経理担当社員の作業量を増やさない(今までより作業時間が減る)
- 会計事務所のサービスを業績見通しや資金繰り提案など未来会計と経営コンサルティングへとシフトする
- 社長および現場の経理担当社員のお互いが納得してから進める
「自計化」のメリットは本当に大きいものです。自計化を進めること自体は非常に良いことです。しかし、あくまでも「自計化」の目的は、「会計処理したデータを経営に生かす」ことであり、そのために企業側の処理時間が増え、経理担当社員の負担があまりに大きくなっては意味がありません。